エッセイ


エッセイ

グラっと揺れる感覚にフっと目を覚ました僕は我に還った。
久しぶりの小さな飛行機の窓から下界を見下ろすと
キラキラと輝いた大海原の水面に機体のシルエットが映し出され、高度が低いことが確認できた。
久しぶりの「波乗りの島」へのフライトだ!!

間もなく着陸のアナウンスとともに始まった、あの素晴らしい一日。
スペシャルな一日!  誰もが経験したことがあるだろう。  
この時もそんな日だった。久々の友人との再会、そしてそんな仲間達と共有する海での時間。
さっきまで乗っていたプロペラ機がまるでタイムマシンのように自分の周りの空間を変化させたのだ。早々、荷物を車に積み込み島の北西部へと向かう。
西海岸にある美しい砂浜に到着すると波は次から次へと、こらえきれないパワーを岸に向けて
頭をもたげ砕け散り、両側にクリーンな壁を形成していた。海の中には数人しか居ない。

波を見ながらトランクスに着替え、早る気持ちを抑えながらワックスを念入りにボードに擦り付ける。海に入る前の儀式のように・・・。

今まで何度、この儀式を繰り返してきたことだろう。
暗いうちに海に到着し仮眠していると、気の早いサーファーがワックスアップしているガリガリ、ゴロゴロと云う音が聞こえてくることがあった。その音を聞きながらこれから始まるサーフに何とも云えないワクワクした気持ちになったことを思い出す。

70年代半ばに波乗りと云う一種独特な道(当時は今とは異なり、サーファーとは独特のジャンルの人種であった)に出逢い多くのサーファーがそうであるように僕も波を追いかけ各地へと旅をした。
この島もそのようにして訪ねた場所の一つで、波の宝庫だった。都会とはかけ離れ、物欲を満たすには適してはいないが魂をリラックスさせるにはもってこいの島。 素晴らしい波、太陽、ゆったりとした時間の流れが忘れてかけていた何かを呼び戻してくれる。
遥か彼方から届いた波のパワーを身体で感じた時、自分の中に足りない何かを強烈に思い知らされるのだ。

広い海の中でサーフボードという道具を使い波(海)と一つになる。
沖を目指しパドルアウトするにも押し寄せる波のパワーに何度も戻され、、それでも沖を目指し漕ぎ続ける。波にモミクチャにされ死ぬ思いも経験する。
そうしてチャレンジすることにより海の中で居る術を学ぶのだ。
サーファーはそういう意味ではサバイバルの達人だろう。
サーフィン以外でもこの精神は大いに役にたつ。大変な目に遭った分、それは自分の血となり肉となり、パニクる度合いも変ってくる。自分の背丈以上の波に乗れるようになるには同じような波に巻かれないとダメだということなのだろう。

僕はこの時、友人から何気なく手渡され塗っていたワックスがSativa Waxだと後に知ることになる。見た事もないパッケージとムスクの香り・・・。
石油成分を減らし植物油に変えエコロジカルな視点で手造りしているという。
僕達が今までどれだけ海に有害成分を知らず知らずとは言え流出して来たのかを掘り下げて考える機会に出くわしたのだ。波乗りにワックスは欠かせない物の一つなら、そこから始めるのも良い考えだ。自分にできる事はやる! それしかない。  

この時以来、僕は自己責任として自分の使用する物に対し今まで以上に注意を払うようになった。

この日のサーフィンは言うまでもなく素晴らしいものとなり、今でもその時の景色や感動は心の中にしっかりとしまってある。心許した仲間達との波乗りのひと時。皆の笑顔が忘れられない。

今も思い出を引っ張り出しては仲間と酒の肴にしてそれぞれの自慢話をする。
きっと誰もが自分の思い出話が一番だと思っているのだろう。

ワックスの香りはそれぞれの思い出を呼び戻す。  ココナッツの香りや当時のサーファースタイル、サーフボードデザインや車にいたるまで・・・。
まるでニール・ヤングやイーグルスのように聴いていた音楽が当時の時間を手繰り寄せるように。

形は変れど海は誰をも受け入れ寄せる波は今も変らずブレイクしている。
そしてサーファーは沖を目指してパドルする・・・。

海がいつまでも美しくあるようにと、心から願う。


【プロフィール】

勝元 ちゅう

70年代前半に波乗りと出逢い 今も独自のスタイルで海と遊ぶ。。。
各地のコアなサーファー、スケーター、ミュージシャンなどと深い繋がりを持つ
オモシロいこと仕掛人
人と人をつなぐ才能は天性のものがある。。。 

 





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